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[Boston第1回]準備編その1

今回から当科HPの新企画として、和田先生の留学体験記を不定期で掲載していきます。今回は皮切りとして「準備編」の掲載です。

渡米後まだ1か月ちょっとですが(本原稿提出は4月)、HPの管理人に急かされて(?)留学体験記を書き始めました(苦笑)。「これから留学に行きたい」、と思っている先生の参考になれば、と思いますが、留学先によって異なることもあると思いますし、細かいことは直接コンタクトを取った方が伝わると思いますので、その際はご一報ください。

なぜ留学するのか?

前々から何となく、「留学したいな」と思っていましたが、臨床、学術活動をしながら日々を送っていく中で、以下のようなことを強く思うようになり、留学を実現すべく動き始めました。

英語でのコミュニケーション

海外学会に何度も参加しましたが、そのたびに自分の英語コミュニケーション能力の低さを痛感しました。市販教材に手を出すも、もちろん十分な能力が得られるわけもなく、、、。教授からもこの点は強調してお話しいただいており、予定の2年のうちに何とか自分の専門分野のことを英語でdiscussionできるような英語能力を付けたいと思います。

基礎研究の経験

東京で働いているとき(日医救急 国内留学時、HP管理人注釈)に週1回だけ基礎研究に触れる時間を確保して頂きましたが、十分な経験が得られたとは言い難く、北大に戻ってからもそれを継続して修得していくことができませんでした。もちろん日本でも基礎研究はできますが、日本にいれば必ず臨床その他もろもろの仕事があり、専念することは不可能です。2年という限られた時間ですが、異国の地でどっぷり研究に浸かってみたいと思いました。

家族との時間

子供が大きくなると、一緒に遊ぶということが少なくなってくると思います。アメリカは家族とともに過ごす時間を大切にする、という考えが根強いですから、そういう社会の中で4歳の娘、妻との時間を過ごしたいと思いました。まだ渡米後1か月ですが、家族で参加できる休日のイベントなどはすごいですね。

留学先選定

「こういう研究をしたい」「このLabで研究したい」という強い思いがあれば、自分でapplyするなどしないといけないでしょうが、私の場合は留学の動機が上記のような感じなので、特にそのような希望はありませんでした。

黒澤先生の写真

黒澤先生

留学し帰国された知り合いの先生のツテもいくつかありましたが、求めていた留学先の条件にぴったり合ったのが、今回来たBoston Universityでした。現在の私の所属するLab(http://www.bumc.bu.edu/busm-pathology/)のPI(principal investigator)であるDr. Kurosawa(文字通り日本人の黒澤先生(http://profiles.bu.edu/display/153090))は、ISTHのScientific and Standardization Committee on DICのco-chairとして当科の丸藤教授とお知り合いです。その縁で2013年に北大で講演をされたこともあります(本HPの「日々の出来事」2013年8月21日参照)。専門はHUS, TMA, sepsis, DIC, Complement systemといったところで、primate(霊長類)であるBaboon(ヒヒ)を使った素晴らしい研究をされてきました。

Boston University Webサイト

Boston University Webサイト

(1)PIが教授のお知り合い、(2)研究テーマが自分の興味に合っている(アメリカで凝固をやっている人ってたぶん少ない)、(3)Bostonという土地、このあたりの理由からBoston Universityを第1候補と考え、2015年1月のSCCM in Phoenixに来たついでにBostonまで見学に来ました。その詳細は本HP「学会・研究会レポート」をご参照ください。この見学から「Bostonに行きたい!」と強く思うようになり、留学を実現すべく手探り状態から準備を始めました。
まずは留学に行かれている、あるいは行ったことのある知り合いの先生からいろいろな情報を聞きました。留学が実現できたのは、諸先生方のご協力あってのものと感謝しております。特に北大の先輩であり大阪大学救急からBrigham & Women’s HospitalのLabに留学されている山川一馬先生には渡米の前にも後にも非常にお世話になりました。

お金のこと

お金のこと

留学には多額のお金がかかります。特にBostonは米国内で物価が高い上位3都市(ちなみにもう2つはNew YorkとSan Francisco)として知られており、暮らしていくのにだいたいどれくらいかかるのから始まり、それを賄うためにどうすればいいかと考えました。

収入 – 留学先からの給料

ぼくの場合、これは初めから「ゼロ」と言われていました。アメリカに入国するにはある一定の収入がないと許可されません。その最低額は州や家族構成によって異なりますが、Labによってはその最低額の半分を出してやるからあとは自分で用意しなさい、というところもあるようです。このあたりは留学者の力量、Labの懐具合などで交渉の余地はあるのかもしれません。

収入 – 留学奨学金

いくつもの留学奨学金がありますが、それぞれにその特徴があるので下調べが必要です。金額や応募期限はもちろん、年齢制限、渡航費(つまり生活費など)として使えるか、受領のための収入制限のあるなし、2年目も応募できるか、学内選考のありなしなどなどです。私はこの情報も山川先生にいただき、それをもとにいろいろ調べて4月末の海外学振を皮切りに5~6つほど応募しました。幸いに先進医薬研究振興財団の血液医学分野で海外留学助成に採択されました。こちらも当HP「日々の出来事」で紹介されております。

収入 – 貯蓄

北大救急の医局関連の外勤を少々頑張りました、、、。(ちなみに、北大救急の外勤は非常に恵まれています。管理人注釈)

収入 – 日本からの収入

私の場合は、丸藤先生をはじめとして、医局の先生方のご理解とご協力があり留学が実現しました。北大病院に籍を残し、「出張」というかたちでBostonに来させていただいております(非常に贅沢です。管理人注釈)。留学を実りあるものとし、多くのものを医局に還元しないといけないと思っております(是非そうして下さい。管理人注釈)。

支出 – 家賃

Bostonの物価は年々高騰しているようです。住む地域にもよりますが、私の住んでいる治安がとてもよいとされるBrooklineで、1 bed room (日本でいう1LDK、一つ一つの部屋は大きいので子供1~2人いる家族でも住めます)で、$2500/月前後。2 bedとなると$3000はします。水道、ガスは家賃に含まれていますが、電気、テレビ+インターネットがそれぞれ$50〜100/月かかります。

支出 – 幼稚園

ピンキリのようですが、きちんとしているところ(どんな所だろう??? 管理人 注釈)だと$1500以上など、信じられない値段です。毎日ではなく週に2、3回というスケジュールで行かせて金額を抑えることもできます。家の近くのほどよいKinder gardenあるいはDay careに空きがあるかどうかも大きな問題です。入園可能かどうかは日本からメールで確認可能です(メールしても返事すらくれないところもいくつかありましたが)。アメリカは学期の始まりが9月ですが、その入園申し込みが1月からだったりします。予約がいっぱいになるとwaiting listにのせてもらいながら他をあたることになるでしょう。実際に行かれている知り合いに幼稚園の評判を聞いたり、幼稚園の入園担当者を紹介してもらえるとスムーズに事が進むかもしれません。

支出 – その他

食費、携帯電話、職場までの交通費、、、などなど挙げあればきりがないですが、色々と、とにかく高いです。今のご時世、ボストンでも日本のものを買うことはできますが、例えば納豆$2.5〜3.0、バーモントカレー$5.00、ってな感じです。

お金の使い方

お金の使い方

日本のお金をアメリカで使う、というのはかなり面倒です。どういう方法が一番いいかわかりませんが、Webで調べたり、実際に留学されている先生に聞いて、私は下記の口座やクレジットカードを日本で新規申込しました。これで今のところ困ることはありません。

SMBC信託銀行(プレスティア)

ネットバンキングで海外送金ができます(アメリカに来て、アメリカの銀行の口座を作ってから送金先登録の手続きが必要です)。アメリカで、日本の口座からお金を引き出すこともできます。

ANA USAカードクレジットカード

日本で使っていたクレジットカードは基本的にアメリカでも使えます。ただ、これらは「円建て」のカードなので、アメリカで使用した際、支払いの際に数%の手数料がかかるようです。また、ガソリンスタンドや航空券購入の際円建てカードは使えないようなので、「ドル建て」のクレジットカードは必要と考えます。ただ、アメリカでは、簡単にクレジットカードを作ることができません。「credit history」つまり、カード使ってもちゃんと支払いしてますよ、という履歴が必要なようです。当然そんなもの最初から持ってないですから、アメリカで好きなカードを作るということはできません。となると、渡米後に銀行口座を開くとクレジットカード(debit付き)をゲットできますので、それを使うか、私の作ったANA USAカード(JAL USAもあります)を作るのが良いかと思います。これは日本にいる時から手続きできて、渡米後も日本語でのサポートが受けられます。受け取りはアメリカの職場、あるいは家が希望であれば住所を証明する書類を送るなど面倒なことはありますが、使えばマイルも貯まりますし、持っていて悪いものではないと思います。

日本の銀行口座

普段使っていた口座で、インターネットバンキングができるような手続きをしておきましょう。

[この続きは「準備編その2」で]

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