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[第11回]高宮宗一朗先生

今回は、研修医ではないのですが、脳外科1年目(医者3年)の高宮先生のインタビューです。高宮先生は、本人が救急研修を強く希望して、4ヶ月間、当センターで勤務してくれました。後期研修医の目からみた救急科の実際をお読みください。

高宮宗一朗先生プロフィール

  • 1987年 北海道芽室町生まれ
  • 札幌北高卒業後、北海道大学医学部入学
  • 2012年3月 同大同学部卒業
  • 2012年4月 – 2014年3月 帯広厚生病院、北大病院などで初期医師臨床研修
  • 2014年3月 北大病院脳神経外科入局

救急は全身管理のエキスパート。脳外科医としても全身管理の手法が必要と感じて再度研修を希望

高宮先生の写真

木を見て森を見ず——
医療の現場にも十分に通用することわざなのかもしれない。細部や一部分に気を取られすぎて、全体を見失うことを意味しているのだが、救急医の横顔で既紹介の佐藤朝之先生も「病名で覚えず、病態を想像」という言葉を表しているように、専門になればなるほど、ある病態は何を起因として起こしているのかを見誤ってしまう危険性がある。起因する部分を治療していかないかぎり、病態の改善はありえない。
救急医は、そういった意味でも運ばれて来る患者の病態、容態が千差万別なために、「森」を見ながらの治療を尽くす。いわば全身管理のエキスパートでもある。
今回、インタビューで登場していただいた高宮先生は、前期研修を終えて脳外科医として専門に歩みだしたばかりだが、その全身管理の治療の重要性を自身の所属する現場でも感じて、再び救急医療の門を叩いた一人である。

高宮先生は初期臨床研修期間中、救急は北大病院で2013年12月から2014年1月にかけて2ヶ月ほど学んだばかりで、「全身管理するようなところが不十分というか、自信がなかったことが一つと、あと、脳外科としてやっていくとしても、外傷とかを診る時に頭だけを診ていて、出血の制御の知識を持っていた方が、頭だけを診ているよりもうまく管理して治療していけるのではないかと思った」と動機を口にする。
脳外科と救急での全身管理の方法の違いについて、高宮先生は「同じような症状の患者を経験したことがないので、その違いは詳しく分からない」と正直に口にするが、「いろいろな(治療方法などの)引き出しが増えたことが大きい」と、再び救急で学んだ意義を強調する。
そのために(脳外科の)病棟で患者の急変とかがあっても、「あんまり慌てずに対処できるのかなあと思ったりしています」と高宮先生は言葉をつないだ。
高宮先生は引き出しを多く作ろうと思って、後期研修で救急を学んでいたわけではないという。それはあくまでも「結果論」にすぎないと冷静に答える。
「脳外科医にいるとどうしても『頭だけなら頭だけ』というふうに診てしまいがちなところを、全身管理という手法で診て行くことを今一度学べたことが大きかった」。
また、救急では集中治療で、いろいろなアプローチ方法を経験できたという。
高宮先生は「モニターが色々あるので、それを一般的な脳外科の人員が少ない中で、全部やれるのかなと思いますが、ほかの地方病院に行っても規模が大きくないところならそれはできない。設備とかそういう面のこともあると思います。全部の施設では使えないですが、やろうと思えばこういうやり方もあるんだなと」と述懐する。
そういう意味では救急での再研修は「(脳外科としても)すごく勉強になった」と次へのステップに自信のほどを窺わせる。

医者というよりは研究者になろうと思って医学の道を志していた時期もあった

高宮先生は、実は医者よりも研究者を高校生の頃に目指していたという。
最初は理学部志望だったそうだが、「医学部の方がもっと基礎研究的なものができるのではないか。漠然としていたけど、感染症の研究をしたいなとその頃は思っていました」と高宮先生。
医学部を卒業すると高宮先生は1年目に帯広厚生病院、2年目に北大病院で初期臨床研修の研鑽を積んで来た。
現在、脳外科医の医局に入局している高宮先生だが、研修期間中、内科医にも興味を持っていたという。そのため、脳外科への入局はぎりぎりまで悩んだという。
脳外科医への決め手は学生の時の、マイクロ顕微鏡を使って糸を縛ったりする実習だったという。高宮先生は「それが面白いなあと思ったからです。それにもともと神経系とか解っていないことが多いので、ジャンルとしても面白そうだと思ったので」と話す。

救急の経験値は高くなっているが、ドキドキ感と不安はつきもの

初期臨床研修医の時代と違い、指導医から一人で任されることが多くなったという。
高宮先生は「研修医の時だと、上の先生の指示でというところが多かったのですけど、(今は)任せてもらえる範囲が広いので、脳外科の患者さんとかがICUに入ったりもするんですけど、一応、担当して診させてもらえるところが、違うかなと思います」と感想を口にする。
また、Dr.カーに乗る際にも、以前は指導医と行動を伴にしていたが、立場がちょっと上になった分、初期臨床研修医を連れ立って現場に向かったり、一人だけで行かされたりするようになったという。それだけにかえって不安が募ることもあるそうだ。
「やっぱりDr.カーとかで上の先生がいなかったりすると、大丈夫かなと思いますし。安心して、カバーしてもらえる甘えもあるんでしょうけど」と高宮先生は本音を口にする。
そんな高宮先生にとって、印象に残る症例はやはり関心のある頭部外傷患者のようだ。
「脳外科系の患者さんで、頭部外傷の人だったり、脳外科の方から来た人で脳死になってしまった人だったり、すごい脳腫瘍で運ばれてくる人だったり」と高宮先生は個人が特定されないように言葉を選ぶ。
「管理の仕方を知らない、あんまり診たこともない症例の脳外科患者のICU管理というのが、いちばん印象に残りましたね」。

救急を学ぼうとする後輩への一言

高宮先生は、学生実習の時に救急のイメージはあまり良くなかったという。学生の時は5年生の研修実習で一週間あったものの、ほとんどが座学だったためだ。
「一日当直して終わりなんですけど、学生時代、こっちもそんなに頑張っていたわけでもなかったし、先生たちもそれほど積極的に接する訳ではなかったので、あんまり印象に残っていなかった。研修する場所としての印象がなかったという意味ですけど」と高宮先生は話す。
しかし、実際に研修医という今の立場になってみると、高宮先生は「(救急は)いいなあ、と思う」と話す。
そこで高宮先生は「まず、(学生時代の)先入観を持たないでとりあえず研修してみたらいいのではないでしょうか」とアドバイスする。
「僕はもともと北大救急で研修をするつもりはあんまりなかったんですけど、先輩に『来いよ、勉強になるから』と言われて廻ってみて、実際に勉強になった。すごい勉強になるからいいよということが、ひとつですね」と高宮先生。
さらに研修医だと、月4週間で6日当直すればいいようなローテーションになっている。ある意味、自分の自由時間が作りやすいのだが、「もっとどんどんやっていってもいいんじゃないかなと思います。余力があればの話ですけど。ただ、やったらやっただけ、経験は積めます」と勤務表以外にも学びの場を増やすことを薦めている。

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