北海道大学病院 救命救急センター | 北海道大学大学院医学研究院 侵襲制御医学分野 救急医学教室

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研修医インタビュー [第8回]阿部靖矢先生

阿部靖矢(のぶや)先生プロフィール

  • 1988年 北海道北見市生まれ
  • 北見北斗高校卒業後、北大医学部入学
  • 2013年3月 同大学卒業

ちょっとした手違いで救急の研修が先に

阿部先生の写真

数学、化学が好きで得意だった阿部先生は高校時代、薬剤師の道に進もうかと思っていたそうだ。薬で苦しんでいる人を助けられるかも、という考えがあったからだという。
同じ人助け。「直接的に手を下せるならば、医者の方がいいのかも」と阿部先生には大きなきっかけが特にあった訳ではなかったが、いろいろと将来のことを考えているうちに、だんだんと進むべき道をはっきりさせていくことができた。
その夢を叶えるために北海道大学医学部を目指し、見事に現役合格。北大に入るとバドミントン部の門を叩いた。中学時代からやってみたいと思ったスポーツの一つで、競技用バドミントンを中学時代に見て「面白い」と感じたためだ。しかし、そのクラブが無く、あきらめていたところ北大にあった。
週3日の練習ながら6年間、クラブ活動にも精を出し、筋トレにも個人的に力を入れていた。「結構、ハードで。授業中、なんども眠くなることがありました」と阿部先生。
クラブでは主務という事務・会計などを司る役職を任じられ、クラブを縁の下で支えていたという。

そんな阿部先生が大学を卒業して初期臨床研修で1年目に選んだ病院は、北海道の道東、帯広市にある厚生病院だった。
医学生時代には内科系、特に循環器内科に興味があり、「心臓など全身に関われるためにいいかな」と阿部先生は感じていたため、厚生病院での一年目の研修でも循環器、消化器、呼吸器の各科を中心に選んだのだという。
そして2年目は「たすきがけ」と呼ばれる研修交流の制度で母校に戻り、そして4月からすぐに救急の研修を受けることとなった。
「いやあ、本当は循環器の方をこの時期に回る予定だったんですけど」と阿部先生は苦笑いする。救急での研修はもともと10月から2ヶ月の予定で希望を出していたという。
「ところが人の都合というか、事務手続き上、ローテーションがずれてしまったようです」と阿部先生は笑いながら裏事情を説明する。

救急で医者として急成長を実感

それでも阿部先生は「一年目の厚生病院では学べないことを学べたので、よかったのかなと思っています」と結果的に、救急での研修が早まったことに感謝している。
「例えば全身管理の仕方」と阿部先生は、その理由をあげる。
薬の使い方、なぜその薬なのかなどの考え方を実践で全身を管理する上で重要なことを学ぶことができたからだという。
そしてこう話を続ける。「ここに来る直前の3月の自分と、(救急で研修を受けて2ヶ月近く経った)今の自分を比べると、圧倒的にできる自分になっている」と阿部先生は実感している。
医者としての自分にも少しずつ自信がついてきたともいう。「ここ(救急)にきてからの成長度合いは今までと違いました」と阿部先生。
もっとも、阿部先生は、当初は救急でももっと簡単にできると甘くみていたそうだ。「一年目の最後は呼吸器内科を回っていたのですけど、その時は自分が主治医的な立場だったんです。もちろん上の先生がバックアップしていてくださっていたのですけど、自分ひとりである程度出来る」と自惚れてしまっていたようだ。
しかし、「ここ(救急)に来て、患者の重症度が違いすぎて、ああ、だめじゃん。これじゃあ、(知識も経験も)足りないじゃん」と阿部先生は思って自省することに。

救急で身についたことは、何と言っても「全身管理の仕方が一番」と阿部先生は振り返る。そして手技的なことに関しても、「カテーテルや器官挿入などほとんど全てやらせてもらえる。それこそ次からは怖くはないなと思うほど、いろいろと経験しました」と話す。

救急では薬の使い方に戸惑いが

その一方で、決して救急での研修のマイナスイメージではないが、阿部先生は治療に疑問を感じることが幾度もあったという。特に「薬の使い方」だそうだ。
救急は緊急性をようするために治療のための投薬がいっぺんに行われる。患者を助けるためには治療効果を発揮させなければならないために、阿部先生の言葉を借りると「一気にどんという感じ」の薬の使用方法だそうだ。そのために、どの薬が本当に効いているのか研修医の自分には確かめようがないというのだ。それは一剤だけで効いているのか、あるいは二剤目が相乗効果を発揮させて効いているのか、はたまた二剤目だけがきいているのかもしれないなど、本当に何が有効なのかが分かりづらいというのだ。阿部先生は何度も疑問符が浮かんできてしまったという。
そんな時に阿部先生は「やっぱり自分は内科向きなのかな。論理的というか、しっかり患者さんに何が効いているのか判断しながらやりたいと思っています」と話す。「もっとも何よりも一番大切なのは、いっきにどんという治療でも、効果がよく見えることが患者にとっては一番いいことですけどね」。

将来は膠原病患者を診るために内科医に

学生時代から阿部先生は内科系に興味を抱いていたという。中でも循環器内科だったという。
「循環器は心臓をはじめ、全身を診られるところで、医者として一番、人助けになると思っていたからです」とその理由を説明する。
ところが循環器の研修などを受けていると全体を診るというよりは心臓なら心臓、腎臓なら腎臓としか向き合っていないように感じたために、循環器よりは内科への思いが強くなったという。

その大きなきっかけは「膠原病患者との出会い」と阿部先生は口にする。
大学時代の実習で接したのが初めてで、その後、担当教官から患者を紹介してもらい個人的に仲良くなったというのだ。
「膠原病は内科の中でも急変することが多い。全身管理の知識が重要になる病気です。診断も難しいけど、全身が診れて医者としていろいろできることがある。免疫とかにも関わる話で、その分野も個人的に好きなので、診断・治療の興味があるので、膠原病内科をやってみたい」と阿部先生は目を輝かした。