北海道大学病院 救命救急センター | 北海道大学大学院医学研究院 侵襲制御医学分野 救急医学教室

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研修医インタビュー [第3回]村上仁志先生

村上仁志先生プロフィール

  • 1986年 北海道札幌市生まれ
  • 北海道立月寒高校卒業後、日本大学医学部入学
  • 2013年3月 同大医学部卒業

持病を研究しようと医の道へ

村上先生の写真

村上仁志先生が医療の道を志すきっかけは、持病の気管支ぜんそくを治すために少しでも良い治療法を見つけたいという思いからだった。幼稚園児代からぜんそく発作のたびに苦しい思いをしてきている。「ぜんそくの研究をするためにも」と医学部への進学を目指した。
しかし、高校時代の全国模擬試験の結果は芳しく無かった。とても合格圏内に届かない成績だったために、医学部以外に気持ちが傾いて浪人生活に。医師になる夢を諦めたものの、「浪人中に色々勉強していくうちに、やはり医学にまた興味が出てきました。せっかく浪人しているんだし、頑張ろう」ともう一度、村上先生は医者部を目指すために奮起したという。
そして2浪の末に日本大学の医学部へ入学、今春、晴れて医者の肩書きを身に付けることができた。

辛さと楽しさが同居の救急研修
まずは自分で考える姿勢の大切さ

間もなく救急での2ヶ月の研修を終える村上先生は、率直な感想を「すごく勉強になる」と口にした。
救急の研修前にも、色々な診療科を回ってきた。しかし、多くの研修先では、担当医師が研修医に指示し、その指示を研修医がこなしていくというスタンスであった。そのため、自分から何か積極的に検査を入れたり、治療法を考えたりということは、ほとんどできなかったと言う。しかし、救急はその正反対。村上先生は「自分でも率先して検査も入れますし、自分で考えて先輩の先生に『こういう検査はどうでしょう?』とか、そういうこともあるので、そういう意味ではすごくやりがいもあります。だから研修していても楽しいです」と頬を緩ませる。
最初から最後まで全部を教えてくれる訳ではないという。その分、まず自分たちで考え、どうしたらいいのか本で調べ、分からないことがあれば担当医に質問することになる。もちろん、本当につまづいた時には先輩医師や担当医師らがフォローしてくれる体制になって、厳しい中にも暖かく見守ってくれている体制になっているという。
村上先生は「逆に一から全部教えてもらっていたら、自分の頭で考えて行動しないのと同じですから、あまり実にならないですよね」と話す。
北大の救急は、自分で計画を立て、自分で治療方針を考える流れができている。「その分、つらいことも多いですが、その分、ためになるというか、実力は(研修に)来た頃に比べると相当違うと思いますね」と村上先生は研修で自分が大きく成長している手応えを感じる。
その一方で、「辛いことも多い」と口にする。フィジカル面とメンタル面との両方での話だ。
当直は月に8回、当直中は医療用PHS電話が鳴るのでゆっくりと眠れない。また、自宅に帰っても勉強しない日は無いと言う。それだけ睡眠時間が削られているというわけだ。さらに一つひとつの指示が患者の命に関わっているだけに、ミスはできないというプレッシャーも感じるという。
村上先生は「今の時期はそういった辛い面も考えても、救急で研修できて、しかも北大のこういった三次救急で貴重な体験をさせてもらって、すごくよかったなって思いながら今も研修しています」と前向きだ。

元気になって退院していく姿を見るのがやりがいのひとつ

北大の救急は3次指定の救急病院。表現の善し悪しはあるかもしれないが、死に直面した患者が運ばれて来る。救急医の診断と治療の一瞬の判断に生死が委ねられているといっても過言ではない医の世界でもある。
毎日、違った症例の患者が運び込まれて来る訳だが、村上先生は特に印象に残った症例を一例だけあげることを避けた。言い換えると、村上先生にとって全ての症例が印象的という。
それはなぜか? 村上先生は救急に運ばれてくる患者さんの「全ての症例で、病態も違うし、どこをポイントに治療するとかが違う。全ての症例が(僕にとって)全て新しいので」と話す。その分、元気になって退院していく姿を見ると、「やりがいを感じます」と村上先生は話す。

研修では勧めたい科のひとつだと思います

救急は課題の連続の職場でもある。村上先生は「これまで回ってきた科で曖昧にしていた知識が、そのまま曖昧にしていたらここでは患者の生死に直結してしまいます。絶対に自分のものにしなくてはならない環境だからです」と研修の率直な感想を口にする。研修は濃密で大変な分、それだけにやりがいも多い。「それに」と村上先生は続ける。「看護師さんとも接する機会が多いのが勉強にもなる」。
救急では看護師さんとのコミュニケーションが特に欠かせない職場で、チームとしての情報共有がなければ治療にうまく当たれないという。特に身に付いたのが医療者とのディスカッション。端的に正確な情報を伝えるためには、日頃の話し合いが重要になってくる。毎朝のカンファレンスでディスカッションがあるために自然に身に付いてきたとはいえ、時々、担当教官から「その情報はいらないよ」と言われることもあるという。「それも勉強になった」と村上先生は話す。
「そういった意味では他の科とはまったく違います。処方箋の指示の出し方でも、ちょっとでも遅いと(看護師から)いろいろ突っつかれてしまうのです。最初は、まだ若いのでなめられているのかなと思ってしまいましたが、今では逆に自分の勉強になっています」と村上先生は苦笑する。

救急の奥深さを知ってしまった村上先生は2年目も救急関連の病院に研修に的を絞り始めている。