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救急医の横顔

最新のインタビュー記事 - [第21回]鈴木喬之先生

鈴木喬之先生の実家は、祖父・父と三代続く医系一家です。子どもの頃は「自分も医師になるのかな」など漠然と考えていたそうですが、中学生の頃、迅速に応急処置をする父の姿を目の当たりにして、決意を固めました。プライベートでは釣りが趣味で、海釣りや渓流釣りを楽しんでいますが、これも「父の影響」だと言います。笑顔が素敵な鈴木先生の仕事観や趣味など魅力に迫りました。

女系家族の中の一人息子、父の背中を見て医師になる覚悟を決める

鈴木先生の写真

穏やかな話し方と笑顔が素敵な鈴木先生は、旭川で内科を開業する家庭の5人兄弟の4番目として生まれました。「姉が3人に妹が一人。完全に女系家族です」と笑います。鈴木家では姉の影響を受けて習い事を始めることが多く、子供のころから水泳、吹奏楽(トランペット)、剣道など、さまざまなことを習っていました。
祖父、父共に医師のため、子供のころから「なんとなく自分も将来は医師になるのかな?」と思っていたそうですが、中学生のときの出来事が、その気持ちを確固たるものにしました。
「ある日、剣道を習っていた道場で、練習を終えた指導者が突然倒れてしまいました。父がすぐに駆け寄って様子を確認して『脳梗塞の疑いがあるのですぐに救急車を呼んでください』と言って、応急処置を行いました」
目の前で命を救う父の姿に感銘を受けて、同じ道を目指す決心をしたそうです。
北大医学部に入学後、さまざまな症例に関わることができる総合診療や救急に関心を示します。「父は呼吸器が専門でしたが、一般内科を開業するにあたり、トータルに診療するようになりました。私も将来的なことを考えて幅広い視野が必要な医療に自然と目が向きました」

医学部よりも他の学部の方が大変?! 好きこそものの上手なれ

他からは大変そうに見える医学部の勉強も、鈴木先生はあまり苦にならなかったと言います。
「医学部は朝から夕方までビッチリ講義が詰まっているので、覚えなくてはならないことは多いですが、北大の場合は勉強しやすい環境が整えられていて、きついと感じることはありませんでした。医学部は卒業論文の提出がなく、国家試験に受かれば就職も可能。むしろ卒論や就職活動がある他の学部のほうが大変だと思っていました」と笑います。

どちらに進むべきか。総合診療と救急で悩む

医学部を卒業後、最初の医師臨床研修を帯広協会病院で行いました。この病院は総合診療科に力を入れています。
「たくさんの先生の指導を受けて、総合診療の道に気持ちが傾きかけましたが、最後の2か月に行った救急外来研修で現場のスピード感にやりがいを求めて、救急に方向転換しました」
帯広協会病院での研修を終えたあと「三次救急の現場を体験したい」と希望し、北大病院の救急科で研修を開始。その時に参加した救急科の医局説明会が、方向を決定づけました。
「救急科の内容について3人の先生が詳しく説明してくださり、『働きやすそうだ』と感じました。その時、アメリカの医療ドラマの影響もあって『救急科に行こう』と決断しました」

どちらか選ばなくてはならないときは両方選ぶ。鈴木先生流の選択

子供のころからたくさんの習い事を行い、釣り、まんがなど多趣味な鈴木先生は、総合診療への関心も諦めきれず、救急科と並行して週一回民間病院で総合診療も行う、二足の草鞋を履いた生活をスタートさせます。
「二か所で働くことはレアなケースだと思いますが、医局や上司に理解があり、『やりたいならやっていいよ』と後押ししてくれたのが嬉しかったです」
総合診療と救急は親和性が高く、「将来的には両方の側面を持つ医療を行いたい」と言います。新しい医療のスタイルが、やがてスタンダードと呼ばれる日も遠いことではないかもしれません。

日々の研鑽を積んで先輩たちの領域を目指す

救急科には、事故などにより意識がもうろうとし、自ら症状を話すことができない患者さんが搬送されることがあります。緊迫した空気の中で、どのようなことを考えて治療にあたっているのでしょうか。鈴木先生はこう答えてくれました。
「北大病院は高度な医療を行っているため、残念ながら研修医では手が出せないことが多く、まだ重篤な患者さんを担当することはありません。もっと経験や知識を積んでさまざまな患者さんを担当した時に、今とは違う達成感や無力感を感じることがあるかもしれませんね」
鈴木先生の穏やかな話し方は、患者さんとじっくり話すことが多い外来にも向いています。
「担当する患者さんの中には、酔っぱらっていて会話が成立しない方が来られることもあります。普通であれば対応が難しそうだと思うかも知れませんが、私は人が好きなので全然苦にならないんですよ」と万能ぶりを見せてくれました。

父が話す医学の話が今は分かるようになった

総合診療と救急の仕事を楽しくやっている鈴木先生ですが、将来的に家業を継ぐことも想定しています。「姉二人が看護師で、そのうち一人が医師と結婚しているので、家族が集まると医療系の話になることも多いですね。昔は何を話しているのかさっぱり分かりませんでしたが、最近は会話に入ることができてきました」と、医師としての成長を感じているそうです。
「医学は日進月歩なので、新しい知識を得るために、テキストを読んで現場で実証を繰り返しています。救急科の先生方は何でも教えてくれますし、教え方も上手なので、上司や先輩から学べることは多いです。てきぱきと働かれている先生方も、患者さんが搬送されたときに、何もできずに悔しい思いをしていた時期があったはず。焦らずに毎日努力を重ねていけば、その領域にたどり着くことができるのだから、今はひたすら頑張ろうという気持ちで過ごしています」

鈴木先生のプライベートタイム

現在「働き方改革」が進められていますが、北大病院の救急科はシフト制です。時間になればすぐに他の先生と交代できるので、突然呼び出されることはほとんどありません。良い仕事をするためには、しっかりと休むことも大事。鈴木先生は休日に釣りを楽しんでいます。
「父が患者さんから竿を貰ったのがきっかけで、週末に釣りに行くうちに夢中になりました。旭川にいたころは渓流釣りが多く、最近では救急科の研修医と看護師3人で小樽に海釣りに行きました」と、プライベートな時間を楽しんでいます。まんがも大好きで、少年ジャンプは毎週購入しています。オンとオフを使い分けてリフレッシュすることが仕事の原動力になっています。

すべての領域をカバーするブラックジャックは救急医だ!

最後にこれからの医療を背負う後輩にメッセージを貰いました。
私自身はまだ救急科に入ったばかりで、救急の奥深さまでは分かりませんが、救急医は何でもこなさなくてはならないので、関わった患者さんに対して「自分の手で命を救えた」と強く実感することができます。一般外来などでは何年何か月という長いスパンで患者さんを診ていきますが、救急は1分1秒の単位で命を救っていることが、医師としての喜びだと思います。
心臓の専門に行きたいとか、眼科に行きたいとか、耳鼻科に行きたいとか、皮膚科がいいとか、それぞれ希望はあると思いますが、体の一部や疾患を診るだけではなく、メンタルも含めてトータルで患者さんを診ることが大切だと思います。手塚治虫の名作「ブラックジャック」は外科医と呼ばれていますが、すべての領域を対象としているので、救急医と呼べるのではないかとも言われています。救急に関心を持ってくれる後輩ができたら嬉しいです。

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