ERC2015(その1)2016.8.22
2015年10月29日から31日までの3日間、チェコのプラハで開催された欧州蘇生学会(European Resuscitation Council)の年次集会に参加してきました。
期間中はあいにくの曇り空が続きましたが、東欧のパリと言われる通りのきれいな町並みを楽しめました。

ホテルはいつか泊まってみたいと思っていたボーテル(ボートのホテル)を選びました。中心部を流れるヴルタヴァ川に停泊しています。意外と揺れず快適でした。

(10/29)
学会会場は中心部から離れたところにあり、電車を乗り継いで向かいました。
会場はメインホールが3つで、他に4つの小さな部屋でoral presentationやhands-on sessionが行われていました。
写真の通り今回のメインテーマは直前に発表されたガイドライン2015でした。

オープニングセッションで強調されていたのがdispatcher(消防指令)の質でした。
最近増えているDispatcher-assisted CPRの研究結果を踏まえて、ここを上手に運用できると院外心停止患者の予後改善が期待できる、という考えのようですね。
特に、入電の内容から心停止であることを認識して早期に救急車を出動させるためにトレーニングとフィードバックが繰り返し強調されていました。

個人的に印象に残った話をいくつか。
胸骨圧迫の場所は「胸骨の下半分」とされていますが、実はもっと下の「胸骨下端」を押したほうが動脈圧が上昇する(が、冠灌流圧は差がない)という研究が紹介されていました。
これまでは剣状突起を押すと肝損傷のリスクが高いので「胸骨下端」は押してはならない、と教えてきましたが、「胸骨下端」を圧迫した方が脳血流が増えて神経予後に良い影響があるかもしれません。
この研究ではハードアウトカムや合併症が検討されておらず、学会としてはガイドラインの内容を変更するには至らず(でも、わざわざピックアップして紹介する)、という感じでした。

G2015では推奨される胸骨圧迫の深さがまた変更となりましたね。
G2010では「少なくとも5cm」と5cmを超えることが推奨されていましたが、G2015では「6cmは超えず、約5cm」となりました。これは9000人の心停止患者のデータを解析したResuscitation Outcomes Consortiumのデータに基いているようです。最も生存率が高かった胸骨圧迫の深さは4.56cm(4.03-5.53cm)でした。そして、いくつかの研究で6cm以上圧迫すると合併症が増えると報告されています。
G2015が発表されて以来、色々なところで胸骨圧迫の深さは「5cm以上、6cm未満」と記載されているのを見かけますが、正しくは「5cm前後、6cm未満」でしょうか?
グラフが示すとおり深く押される患者よりも浅く押される患者の方が多いことが問題であり、実際の現場では「強く押す」ことを強調するのがよいのではないかと思いますけど。

夜は郷土料理がおいしいと評判のお店へ。定番のGulasというシチューを食べてみました。最初の数口はおいしかったのですが、途中で飽きてしまい完食できませんでした。以降、色々なチェコ料理にチャレンジしましたが、結果「僕はチェコ料理が好きではない」ことがわかりました。
ビールはおいしいんですけどね・・・。


プラハ城の近くで見かけた”浮いている人”です。どうやって浮いているかわかりますか?
