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北海道大学病院救急科 ホーム > Wada T, Acute Med Surg. 2017 4:371-372.

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Wada T, Acute Med Surg. 2017 4:371-372.2018.1.16

photo和田

Differences in coagulofibrinolytic changes between post-cardiac arrest syndrome of cardiac causes and hypoxic insults: a pilot study.
Wada T, Gando S, Mizugaki A, Kodate A, Sadamoto Y, Murakami H, Maekawa K, Katabami K, Ono Y, Hayakawa M, Sawamura A, Jesmin S, Ieko M.
Acute Med Surg. 2017 Mar 27;4(3):371-372.
doi: 10.1002/ams2.270.
PMID: 29123894

論文へのリンク(外部サイト)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5674472/

著者コメント

窒息や縊頚など低酸素が原因の心停止蘇生後の蘇生後の神経学的予後は絶望的に悪いことは実臨床の感覚で共通の認識かと思いますし(もっとも経静脈が圧迫され静脈うっ滞を来す縊頚と窒息の病態は異なる可能性がありますが)、突然の心停止を来す心原性心停止と違い低酸素による心停止は心停止前の低酸素、低灌流が予後に影響していることは容易に想像できます。その観点から、Thromb Res 2013; 132: e64-69 (PMID: 23726093)のサブグループ解析として、心原性PCASと低酸素性PCASの凝固と線溶の状態を評価してみました。予想通り、低酸素性心停止の方が有意に凝固亢進の指標である可溶性フィブリン(soluble fibrin)、および線溶の指標であるplasimin-α2 plasmin inhibitor complex (PPIC)が高値でありました。過去のいくつかの報告により、心停止からCPR開始までの時間、およびCPRの時間、つまりは低酸素の「時間」が線溶の程度と相関することが示されておりますが、本研究により間接的に低酸素の「程度」を反映する心停止原因が凝固、線溶の変動に関わることが示されました。本研究結果をもとに、さらにNを増やしての検討、予後予測への応用、蘇生法の見直し、などさらなる研究につなげて行ければと考えております。

論文要旨

【背景】心停止後症候群(post-cardiac arrest syndrome: PCAS)に凝固線溶異常を合併することは知られているが、その病態について詳細に検討した研究は少ない。窒息や縊頚など低酸素を原因とするPCASは突然の循環停止を来す心原性のPCASに比べ予後が悪いことが知られており、異なる病態が推察される。心原性と低酸素によるPCASの凝血学的因子の変化の相違について検討した。
【対象】72時間以上生存した心原性13人、低酸素性13人のPCAS患者の搬入時、第3病日の凝固線溶指標を測定し、両群間での比較を行った。
【結果】低酸素性PCASにおいて、トロンビン活性を反映する可溶性フィブリンに加え線溶活性を反映するPPICが有意に高値であった。第3病日にはそれらの因子は両群間で有意な差は認めなかった。cerebral performance category (CPC)1、2を予後良好、3以上を予後不良とすると、予後良好は心原性で4名、低酸素性0名で有意な差を認めた(p=0.003)。
【結語】PCASでは全身性の虚血再灌流障害により血管内皮細胞傷害が起こり、過剰な凝固亢進と線溶亢進が起こるが、低酸素性PCASにおいてはその程度が顕著であり、より強い内皮細胞傷害の存在が疑われる。

心停止蘇生後患者における(A)可溶性フィブリンと(B)plasmin‐α2 plasmin inhibitor complex (PPIC)の経時的な変化
黒:低酸素関連心停止患者、灰色:心源性心停止患者、白:健常人
*P < 0.05 心源性 versus 低酸素関連; **P < 0.05 versus 健常人.