北海道大学病院 救命救急センター | 北海道大学大学院医学研究院 侵襲制御医学分野 救急医学教室

〒060-8638
北海道札幌市北区北15条西7丁目
Tel / 011-706-7377 (内線7377)

お問い合わせ

北海道大学病院救急科 ホーム > 和田剛志 救急・集中治療 2014; 26: 824-828.

業績紹介

和田剛志 救急・集中治療 2014; 26: 824-828.2015.4.27

photo和田

徹底ガイド DICのすべて2014-15 心停止後症候群
和田 剛志
救急・集中治療 2014; 26: 824-828.
医中誌ID:2014296375

論文へのリンク(外部サイト)

http://www.sogo-igaku.co.jp/eshopdo/refer/vid529.html

著者コメント

救急・集中治療に従事する医師が一度は手に取る「救急・集中治療」ですが、当科丸藤教授が編集されている「DICのすべて」が数年ぶりに改定され、今回「心停止後症候群」という項が追加になりました。
2008年に国際蘇生連絡協議会(International Liaison Committee on Resuscitation: ILCOR)は、心停止後症候群(post-cardiac arrest syndrome: PCAS)という概念を発表しましたが、その病態の中心は、循環停止による虚血と心拍再開による再灌流障害です。過去にPCASは、その病態が敗血症と類似していることから「sepsis-like syndrome」とも称され、虚血/再灌流障害と凝固線溶異常に関する報告も散見されます。論文中にも記載していますが、PCASに合併する凝固障害の病態にはplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)が重要な役割を果たしているようです。引用文献の一つである、Wada T, et al: Thromb Res 132:e64-69, 2013も合わせて読んでいただくと理解が深まるかと思います。
PCASについて簡単に概説し、その構成要素であるpost-cardiar arrest brain injuryの病態にsystemic ischemia/reperfusion responseが深くかかわっている可能性についても論述しました。PCASに合併する凝固線溶異常病態の解明が、PCASの新たな治療法開発につながれば、と考えています。

論文要旨
  • 心停止後症候群の構成要素の一つであるsystemic ischemia/reperfusion response(全身性虚血/再灌流障害)に伴う徴候の一つとしてDICを合併する。
  • 凝固と線溶の不均衡による微小循環不全が臓器不全の原因となり予後不良につながっている。特にplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)による線溶抑制がその病態の主因となっている。
  • “No-reflow phenomenon”という概念で知られている脳微小循環障害の病態はDICそのものであり、心停止後脳機能障害に影響を与えている。
  • 心筋梗塞や肺塞栓症が心停止の原因として大半を占めることや、no-reflow phenomenonの病態を考えると、心肺停止患者に対する線溶療法の有用性が想起されるが、現在のところその効果に否定的な報告が多く推奨されない。