Wada T. Thromb Res. 2013; 132: e64-9.2014.1.8

Coagulofibrinolytic changes in patients with disseminated intravascular coagulation associated with post-cardiac arrest syndrome–fibrinolytic shutdown and insufficient activation of fibrinolysis lead to organ dysfunction.
Wada T, Gando S, Mizugaki A, Yanagida Y, Jesmin S, Yokota H, Ieko M.
Thromb Res. 2013 Jul;132(1):e64-9.
doi: 10.1016/j.thromres.2013.05.010.
PMID: 23726093
論文へのリンク(外部サイト)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23726093
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0049384813002028
著者コメント
当科からすでに、敗血症、重症外傷病態におけるエラスターゼが関与する線溶の論文が出されていますが、それに引き続き心停止後症候群(post-cardiac arrest syndrome; PCAS)病態におけるエラスターゼによる線溶に注目した研究です。敗血症、重症外傷と同様に、PAI-1が上昇しプラスミンが抑制される状態において、エラスターゼによる線溶はDICや臓器不全発症に重要な役割を果たしている、という興味深い結果になりました。エラスターゼは線溶に関与している一方、凝固亢進作用があることも知られており、生体反応としてどのような役割を担っているか不明なことも多く、今後さらに研究を進めていきたいと考えています。
論文要旨
【はじめに】PCASはDICを合併し多臓器不全を来すが、凝固亢進と線溶抑制に拮抗する線溶活性の不足が機序として想定される。PCASにおける凝固線溶異常と臓器不全に関る凝固線溶系指標に関して検討した。【方法】蘇生しICUに入室した院外心停止患者52名の搬入時、第3、5病日の各種凝固線溶指標を測定した。【結果】多臓器不全群でsoluble fibrin(トロンビン活性を反映), tPAIC(PAI-1を反映)は高値であったが、D-dimer, EXDP(エラスターゼによるフィブリン分解産物)に有意差はみられなかった。tPAICはSOFA増加の独立した予測因子であった。DIC患者の非多臓器不全群で認めたtPAICとEXDPの正相関は多臓器不全群で確認できなかった。【結語】PCASに合併するDICでは、トロンビン活性亢進とPAI-1起因性線溶抑制に対して、プラスミン・エラスターゼによる線溶活性不足が臓器不全を惹起する可能性が示唆される。