Tsuchida T, Hayakawa S , Kumano O. Thromb Haemost. 2023 Aug 1.2023.8.15
Characterization and usefulness of clot-fibrinolysis waveform analysis in critical care patients with enhanced or suppressed fibrinolysis
Takumi Tsuchida, Mineji Hayakawa, Osamu Kumano
Thromb Haemost. 2023;10.1055/a-2145-7139.
DOI: 10.1055/a-2145-7139
PMID: 37527783
論文へのリンク(外部サイト)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37527783/
https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/abstract/10.1055/a-2145-7139
著者コメント
近年報告が蓄積されてきている凝固線溶波形解析(clot-fibrinolysis waveform analysis:CFWA)についての論文です。CFWAはAPTT 測定で用いる自動凝固分析装置によって行われますが、APTTと異なり試薬にt-PAを添加することで線溶能も同時に測定することができます。したがって、CFWAは凝固能のみならず線溶能を包括的に評価できる測定系であり、その汎用性から今後の更なる臨床応用が期待されています。私はこの研究のお話をいただくまでCFWAについての知識が全くない、というよりCFWAの存在すら知らない状態でした。早川先生ならびに産業技術総合研究所の熊野様にご指導をしていただき、研究成果としてまとめることができました。論文執筆を通して様々な先生方に指導していただける機会が豊富にあり、大変恵まれていると感じています。未知の領域にも今回のように踏み出しやすい環境を作っていただいているので、今後もあらゆる分野で挑戦を続けていこうと思います。
論文要旨
救急領域にCFWAが応用された研究は非常に限られている。本研究では、当院救急科に入院した患者から得た298検体を対象に解析を行った。CFWAでは線溶時間、min1、fibrinolysis min1 (FL-min1)、min1/FL-min1を測定した。min1、FL-min1はそれぞれ透過率の一次微分曲線から得られた凝固相および線溶相の絶対最大値である。検体はCFWAの線溶時間に基づいて、線溶短縮群、基準値内群、線溶延長群に分類された。本研究では、線溶時間、min1、FL-min1、min1/FL-min1以外に、凝固線溶マーカーも同時に測定された。
凝固マーカーについては、Fbgが線溶短縮群、基準値内群、線溶延長群の順に統計学的有意に増加した。一方でFMC ではFbgと反対の傾向、すなわち線溶時間が延長するにつれてFMCが有意に減少した。線溶マーカーのうち、α2-PI のレベルも線溶時間の延長に伴い有意に上昇した。さらに、Plgのレベルも、α2-PIと同様の傾向を示した。PICは、線溶延長群で高値を示したが、他の群では有意差はなかった。さらに、D-ダイマーも3群間に有意差は認められなかった。min1、FL-min1、および min1/FL-min1については、min1 および min1/FL-min1 の中央値が線溶短縮群、基準値内群、線溶延長群の順に増加した。集中治療領域において、CFWAは患者のPlgおよびα2-PIレベルを反映する汎用性のある測定法と考えられ、さらに、CFWA は測定中に tPA を添加するため、内因性 tPA の影響を受けない特徴がある。CFWAは凝固反応に関連する線溶反応の活性化を高感度に検出できることから、CFWAは急性期疾患においても患者血液の線溶状態を分類するための有用なツールである可能性が示された。