北海道大学病院 救命救急センター | 北海道大学大学院医学研究院 侵襲制御医学分野 救急医学教室

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業績紹介

Tsuchida T, et al. Medicine 102(6):p e32850, February 10.2023.2.27

photo土田

Gender-related differences in the coagulofibrinolytic responses and long-term outcomes in patients with isolated traumatic brain injury: A 2-center retrospective study
Takumi Tsuchida, Takeshi Wada, Ryuta Nakae, Yu Fujiki, Takahiro Kanaya, Yasuhiro Takayama, Go Suzuki, Yasutaka Naoe, Shoji Yokobori.
Medicine 102(6):p e32850, February 10, 2023.
DOI: 10.1097/MD.0000000000032850

論文へのリンク(外部サイト)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9907995/

著者コメント

日本医科大学の先生方に集めていただいたデータを用いて行った研究です。日本医科大学の先生方とは面識がなかったのですが、大変な思いをして集めていただいたデータを快く提供していただきました。中江先生をはじめ、多くの先生方のご協力のおかげで一つの論文が完成しました。本当にありがとうございました。
この研究は、「女性は出産(すなわち出血)に備えているので、出血や外傷に関しては男性より強いのでは?」という私の単純な思い付きから始めたものです。私の相談を受けた和田先生が中江先生に取り次いでいただき研究が実現しました。以前の研究もそうですが、和田先生はいつも私の自由な発想を受け入れてサポートしてくれます。自分もいつかそんな上司になりたいと思っています。

論文要旨

凝固機能は性別によって異なり、女性は凝固が亢進しやすい。以前のいくつかの研究で外傷患者の性別と予後の関係が検討されているが、確実な結論には至っていない。単独頭部外傷(iTBI)の患者は凝固障害をきたすが、これまでの研究で性差について詳細に検討したものはない。
本研究は,2施設で実施された前向き登録の事後解析研究である。登録された52名のiTBIの成人患者(男性31名、女性21名)を対象とした。各患者において、凝固線溶マーカーと6ヵ月後の神経学的転帰との関連を評価した。さらに、神経学的予後や年齢(50歳未満or以上)によって患者を分類し、サブグループ解析を行った。男性では、受傷1時間後のAPTT、FDP、D-ダイマー、α2-PI、PIC値が神経学的長期予後と関連があったが、女性ではこれらの凝固線溶マーカーと予後との関連はなかった。50歳未満では、フィブリノゲンFDP、D-ダイマー、プラスミノゲン、PICに性差が認められたが、50歳以上の年齢層ではこれらの差は無かった。
男性では、外傷性脳損傷直後の凝固線溶系マーカーの悪化が、受傷6カ月後の神経学的予後不良と関連する可能性が示唆された。