Tsuchida T, Mizuguchi Y. Oxf Med Case Reports. 2021 Oct 26; 10: omab090.2021.11.8
Pseudo-cardiac tamponade owing to a large hiatal hernia.
Takumi Tsuchida, Yoshifumi Mizuguchi.
Oxf Med Case Reports. 2021 Oct 26; 10: omab090.
doi: 10.1093/omcr/omab090
論文へのリンク(外部サイト)
https://academic.oup.com/omcr/article/2021/10/omab090/6410417
著者コメント
巨大な食道裂孔ヘルニアが心臓を圧迫し、心タンポナーデと同様の循環動態に陥った症例の報告です。私は自分一人だけの力では何事も成し遂げられないのですが、今回の報告では大学同期で現在は循環器内科で活躍している水口賢史先生に御協力していただきました。親しい大学の同期と連名で学術的な報告できる日が来てとても感慨深かったです。また、私にとっては他科の先生と共に研究する初めての機会だったのですが、今回は循環器内科の専門的な鋭い視点や考察を目の当たりにして非常に勉強になりました。今後も他科の先生方とコラボレーションして質の高い研究をたくさん行っていきたいと思います。
論文要旨
91歳の女性が数時間にわたる発汗、喘鳴、喀血を主訴に来院した。ショック状態であったが、輸液や昇圧薬に反応が乏しかった。原因検索をしたところ、巨大な食道裂孔ヘルニアにより縦隔内に迷入した胃が背側から心臓を圧迫している所見を認めた。経鼻胃管による胃内容物のドレナージをしたところ、速やかにショック状態から離脱することができた。
巨大な食道裂孔ヘルニアは、心電図異常、不整脈、循環不全、心停止などが生じる可能性がある。今回の血行力学的状態は心タンポナーデに似ているが、心嚢液貯留がないため厳密には心タンポナーデではなく、偽性心タンポナーデである。偽性心タンポナーデでは心嚢液貯留が無いため、心音の減弱や心電図での低電位は認めない。致死的な合併症を伴う食道裂孔ヘルニアは通常手術適応であるが、本症例では年齢などを考慮して保存療法が選択された。