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業績紹介

Hayakawa M, et al. BMJ Open. 2020 Sep 6;10(9):e037238.2020.9.14

photo早川

Restrictive transfusion strategy for critically injured patients (RESTRIC) trial: a study protocol for a cluster-randomised, crossover non-inferiority trial.
Hayakawa M, Tagami T, IIjima H, Kudo D, Sekine K, Ogura T, Yumoto T, Kondo Y, Endo A, Ito K, Matsumura Y, Kushimoto S.
BMJ Open. 2020 Sep 6;10(9):e037238.
doi: 10.1136/bmjopen-2020-037238.
PMID: 32895281

論文へのリンク(外部サイト)

https://bmjopen.bmj.com/content/10/9/e037238.long

著者コメント

日本外傷学会の他施設臨床研究委員会で主導研究としてやらせて頂いている「重症外傷患者に対する制限輸血戦略 クラスターランダム化クロスオーバー非劣性試験」のプロトコル論文です。それなりに論文は書いてきましたが、プロトコル論文は初めての経験で全く勝手が違って、難渋しました。色々とrejectを食らいながら、今回のBMJ openに投稿したのですが、Covid-19の流行のためか、査読のレスポンスが極端に悪くなり、、、やっとのacceptです。

論文要旨

重症外傷患者は、出血とともに外傷に伴う全身性炎症反応などにより輸血を要する頻度が高い。日本外傷学会が主導した多施設共同観察研究では、重症外傷患者796症例のうち6時間以内に207症例(26%)、24時間以内に241症例(30%)が赤血球輸血を受けている。しかし、重症外傷患者管理における急性期の至適な輸血閾値は明らかでない。
ICUに入床した838名の重症患者を対象として赤血球輸血の閾値を検証したTRICC studyでは、ICU入室後72時間以内にヘモグロビン値が9.0g/dLを下回った患者が対象となっている。ヘモグロビン値の目標を10~12g/dLと7~9g/dLに設定し比較しているが、統計学的な有意差は伴わないものの、7~9g/dLを目標とした患者群(輸血制限群)の方が、生命予後や臓器不全の合併頻度に良い傾向を認めていた。しかも、輸血量は輸血制限群の方が有意に少なかった。このTRICC studyから203名の外傷患者を抽出したsubgroup解析が報告されているが、輸血制限群で生命予後や臓器不全の合併頻度に差を認めることなく、輸血量が減少していることが示されている。
しかし、TRICC studyでは活動性の出血を伴う症例は除外されていることや、ICU入室後の研究であるため、ICU入室前の輸血戦略や止血術(外科的止血やinterventional radiology(IVR))などが考慮されていない。このため、外傷急性期の輸血戦略の根拠としてTRICC studyの結果を用いるのは不適切な可能性がある。
このような現状を鑑みると、重症外傷全般を対象とした外傷急性期の赤血球輸血の目標ヘモグロビン値を検証し、適切な輸血戦略を明確にすることは、これまでに明らかにされていない外傷患者の予後の向上に寄与する重要な課題であると考えられる。
本論文は、重症外傷全般を対象とした外傷急性期の赤血球輸血の目標ヘモグロビン値を7~9g/dL に設定しても、10~12g/dLと臨床的な差が生じないのではないか?と言う仮説を検証するためのRESTRIC trialの研究計画を記載した論文である(https://www.facebook.com/groups/422802258535430)。

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