北海道大学病院 救命救急センター | 北海道大学大学院医学研究院 侵襲制御医学分野 救急医学教室

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最近の業績 - ピックアップ

Tsuchida T, Kamiishi T, Usubuchi H, et al. Resusc Plus. 2024 Sep 24;20:100786.2024.10.15

photo土田

Complication frequency of mechanical chest compression devices: A single-center, blinded study using retrospective data
Tsuchida T, Kamiishi T, Usubuchi H, Semba A, Takahashi M, Mizugaki A, Hayamizu M, Hayakawa M, Wada T.
Resusc Plus. 2024 Sep 24;20:100786.
DOI: 10.1016/j.resplu.2024.100786.

論文へのリンク(外部サイト)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39386132/
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666520424002376

著者コメント

最近の心停止蘇生の現場では、機械的胸骨圧迫装置が普及してきており、札幌市でも近年になって使用が開始されました。一方で、臨床現場で働いていると機械的胸骨圧迫装置によると思われる合併症を散見します。本研究では、心停止患者さんに対して質の高い介入を行っている市立札幌病院のデータを用いて、機械的胸骨圧迫装置の合併症頻度を調べてみました。
今回の研究では、当科の先生方だけでなく、画像診断に関して放射線科の上石先生、臼渕先生にご協力いただきました。また、札幌市消防局の大西様、谷内様から質の高いデータを提供していただきました。今回もたくさんの方々にサポートしていただいて論文を執筆することができました。ご協力ありがとうございました。

論文要旨

本研究は、救急隊から胸骨圧迫を受けた院外心停止の成人患者を対象とした単施設の後方視的研究である。患者は傾向スコアによりマッチングされ、機械的胸骨圧迫装置(LUCAS)群と従来の用手圧迫によるManual群に割り付けられた。主要転帰は胸骨圧迫による合併症とし、データが盲検化された放射線科専門医によりCT画像で評価された。合併症に関する危険因子の解析にはロジスティック回帰分析を用いた。
全体で261例の患者が抽出され、Manual群とLUCAS群(各69例)に分けられた。Manual群はLUCAS群に比べ、現場から救急部までの所要時間および胸骨圧迫の実施時間が短かった。合併症発生率では、胸骨圧迫合併症全体に有意な群間差はみられなかったが、LUCAS群ではManual群に比し、血胸の発生が多かった。ロジスティック回帰分析では、女性、高齢、長い胸骨圧迫時間が合併症と有意な相関を示したが、LUCAS使用の有無は相関しなかった。
成人院外心停止患者におけるLUCASの使用と胸部圧迫合併症の全発生率との間に関連は認められなかった。LUCASは用手による胸骨圧迫と比較して、より多くの血胸症例とより長い搬送時間と関連していた。LUCASの有益性を評価するには、さらなる研究が必要である。