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業績紹介

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Tsuchida T, Takahashi M, et al. Medicine (Baltimore). 102:e35065. 2023 September 22.2023.10.10

photo土田

Differences in acute outcomes of suicide patients by psychiatric disorder: Retrospective observational study
Takumi Tsuchida, Masaki Takahashi, Asumi Mizugaki, Hisashi Narita, Takeshi Wada
Medicine (Baltimore). 2023;102(38):e35065.
DOI: 10.1097/MD.0000000000035065

論文へのリンク(外部サイト)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37746963/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10519571/

著者コメント

救急医として勤務する中で、自殺企図に至ってしまった患者さんを診る機会は少なくありません。今回の研究は、自殺企図により多くの若い患者さんが命を落としたり、重い後遺症を負ったりする現状に対して、私たちが介入できる糸口がないかを模索する過程で行った研究です。私のふとした思い付きで始めた本研究は、集めたデータもデザインも非常に拙いものだったのですが、当科の高橋正樹先生をはじめとした共著の先生方のおかげで何とか形にすることができました。特に、精神科の成田先生には救急医にはない視点でのご意見をいただき大変勉強になりました。今後も精神科領域のトピックに関して積極的に研究を行って精神科の先生方と一緒にエビデンスを発信していきたいと考えています。

論文要旨

自殺は大きな経済的損失を伴う社会問題であり、その犠牲者は主に生産人口である。自殺リスクの評価に関する報告は多いが、そのほとんどは長期的な管理に焦点を当てたものである。したがって、自殺企図患者における急性期における身体的な重症度や予後に影響を及ぼす因子については十分に検討されていない。本研究は当院救急部に搬送された自殺企図患者のデータを用いた単一施設の後方視的観察研究である。自殺の転帰に対する年齢、性別、精神科治療歴、自殺方法、飲酒、入院の影響を評価した。転帰は28日死亡率とCPCを用いて評価した。死亡率の高い自殺方法(縊頚、墜落、CO中毒、熱傷)を致死的方法と定義し、統合失調症、気分障害、身体症状症の患者について詳細なリスク評価を行った。医療記録から同定した322例を分析した。非生存群では、高齢者、男性、精神科治療歴のない患者が多かった。対照的に、生存群では自殺企図前に飲酒していた患者が多かった。サブグループ解析では、統合失調症患者の神経学的転帰が不良であった。気分障害の患者は他の精神科患者よりも院内死亡率が高く、致死的方法を選択した患者に限定した場合も同様の結果であった。疾患別では、ストレス関連障害と身体症状症の患者の生存率は高い傾向にあったが、精神科通院率は低かった。一方で、気分障害の患者は精神科通院率は高かったが生存率は低かった。この結果は、自殺のリスクが高いと考えられる気分障害患者の自殺死亡率を減少させるには、通常の外来治療だけでは十分でない可能性を示唆している。

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