業績紹介

Wada T, Crit Care. 2017;21:219

Disseminated intravascular coagulation with increased fibrinolysis during the early phase of isolated traumatic brain injury.
Wada T, Gando S, Maekaw K, Katabami K, Sageshima H, Hayakawa M, Sawamura A.
Crit Care. 2017;21:219.
doi: 10.1186/s13054-017-1808-9
PMID: 28826407

photo和田

論文へのリンク(外部サイト)

https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-017-1808-9

著者コメント

頭部外傷においてDICに一致した消費性凝固障害、脳をはじめとする全身臓器への播種性微小血栓形成が確認されています。またFDP、D-dimerなど線溶系マーカーの高値と予後不良の関係も指摘されています。これらの結果から「頭部外傷症例における線溶亢進型DICの発症が予後不良に関わっているのでは?」、という仮説が想起されます。外傷ではショックに起因する内皮細胞からのt-PAの放出と凝固亢進に対する二次性の凝固亢進が重要ですが、出血性ショックを来すことが稀な頭部外傷では線溶亢進に対する前者の影響は不明です。そこで単独頭部外傷でDICを来した症例を線溶亢進のあり、なしで比較しました。仮説通り、線溶亢進型DICは線溶亢進なしのDIC症例に比べAPACHE IIスコアが高値で予後も不良でした。線溶亢進型DICでは線溶亢進なしのDICに比べ乳酸値が有意に高値でしたが両群間に血圧の差はありませんでした。以上から、頭部外傷で線溶亢進を来す機序は出血による低灌流ではなくDICに伴う組織低灌流であると考えられます。同時期にpublishされた早川先生の論文(Crit Care 21:222, 2017)と合わせて読むと理解が深まると思います。

論文要旨

背景:頭部外傷症例にDICに一致した凝固障害を来すことが知られている。
仮説:単独頭部外傷における線溶亢進型DICの発症が予後不良に関連しており、組織低灌流が線溶の亢進につながっている。
方法:単独頭部外傷患者を急性期DIC診断基準によりDIC群、非DIC群に分け、DIC群をさらに線溶亢進群(FDP>100μg/ml)、非線溶亢進群に群分けした。血小板数、凝固・線溶マーカー、SIRSスコア、SOFAスコア、乳酸値(組織灌流の指標)予後などを比較した。
結果:DIC群では消費性凝固障害、低アンチトロンビンを来しており、FDP、D-dimerが高値であった。DICを発症した患者のすべてで臓器不全を伴うSIRSを発症し予後が不良であった。これらの変化は線溶亢進型DICの症例でより顕著であった。DIC群、非DIC群で血圧に有意な差はなかった。組織低灌流の有無(乳酸値>4mmol/l)。乳酸値は線溶亢進の発症の独立した予測因子としては抽出されなかった。
結論:頭部外傷において線溶亢進型DICの発症が予後不良に関与している。低血圧による組織低灌流ではなくDIC(凝固亢進)による微小循環障害に起因する低灌流が線溶亢進の機序と考えられる。