業績紹介

Hayakawa M, Crit Care. 2017 21:222

Hyperfibrinolysis in severe isolated traumatic brain injury may occur without tissue hypoperfusion: a retrospective observational multicentre study.
Hayakawa M, Maekawa K, Kushimoto S, Kato H, Sasaki J, Ogura H, Matsuoka T, Uejima T, Morimura N, Ishikura H, Hagiwara A, Takeda M, Kaneko N, Saitoh D, Kudo D, Kanemura T, Shibusawa T, Furugori S, Nakamura Y, Shiraishi A, Murata K, Mayama G, Yaguchi A, Kim S, Takasu O, Nishiyama K.
Crit Care. 2017 Aug 23;21(1):222.
doi: 10.1186/s13054-017-1811-1.
PMID: 28830477

photo早川

論文へのリンク(外部サイト)

https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-017-1811-1

著者コメント

外傷学会の将来計画委員会に参加させて頂いて、多施設共同で後ろ向きに集めたデータ(J-OCTET study)を解析した論文です。
重症外傷の搬入時には、FDPやD-dimerの異常高値を伴っており、線溶亢進状態であると認識されています。ROTEMを用いた過去の報告で、線溶亢進はショックと強い関連があることが示されています。しかし、出血性ショックを伴わない頭部単独外傷でも、FDPやD-dimerの異常高値を認めることは、よく知られているところです。今回は、症例を頭部単独外傷と体幹部外傷に分け、線溶亢進と関係する因子は何なのかを検討しています。
外傷の線溶亢進は、組織損傷による凝固亢進に反応しての線溶と、ショックからの線溶が混在していると考えています。頭部単独外傷は、前者のみと理解すればよいのです。

論文要旨

【背景】線溶亢進は、重症外傷の重要な合併症の一つである。線溶亢進は、古くからD-dimerやFDPの上昇で認識されていたが、近年はROTEMなどのthromboelastometryで評価されることも多い。線溶亢進は、重症頭部単独外傷で高頻度に認めるが、関連する因子に関しては明らかではない。今回、重症頭部単独外傷における線溶亢進と関連する因子を検討した。
【方法】ISS≧16以上の重症外傷患者が登録されたJ-OCTET studyから、重症頭部単独外傷患者(TBI群, 頭部AIS≧4かつ頭部以外のAIS<2)と体幹部外傷患者(non-TBI群, 頭部以外のAIS≧3かつ頭部AIS<2)を抽出した。線溶亢進は、過去の報告に基づきD-dimer≧38mg/Lと定義した。組織損傷の程度はLDHとCKで評価した。組織低かん流は、Lactateを指標とした。線溶亢進と外傷の重症度、組織損傷の程度、組織還流の指標の関係をTBI群とnon-TBI群で比較検討した。
【結果】TBI群に111名、non-TBI群に126名が組み入れられた。両群とも、線溶亢進を認める患者は、線溶亢進を認めない患者と比較して、より重症であり、より多くの輸血を必要としていた。両群とも、組織損傷の程度は線溶亢進の合併と関係していた。組織低かん流は、non-TBI群でのみ線溶亢進と関係していたが、TBI群では関係性を認めなかった。Non-TBI群では、Lactateの上昇とPTなどの凝固系検査の悪化に相関関係を認めていたが、TBI群では認めなかった。
【結語】頭部単独外傷群、体幹部外傷群の両群に置いて、線溶亢進は、組織損傷と外傷の重症度に関係していた。しかし、組織低かん流は、体幹部外傷群でのみ、線溶亢進と関係しており、頭部単独外傷群では関係性を認めなかった。